Alternative Note

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露光オーバーによるソラリゼーション

Expmin.png

どのプロセスにおいても最小露光時間は重要です。特にプラチナ・パラジウムプリントでは露光をある時間以上かけても黒が締まる事はなく、逆に濃度が落ちて反転(ソラリゼーション)したような黒になることがあります。
上の図は6.00分の露光をかけた31Step tabletのプリント濃度です。2.38分から濃度が下がっています。つまりその時間以上露光をかけても最大黒は上がらずにに逆に下がると言うことです。

注;露光時間等は印画紙のコントラスト、露光機の光量によって変わります。

用紙の種類によるインク濃度の違い

デジタルネガを純正のプリンタドライバで出力する場合、設定で用紙を選択するダイアログがある。
この用紙の選択によってインク濃度の違いが出てくるので、テストしてみた。
なお、インクはマットブラックを使用している。

ピクチャ 3.png

上記のグラフのようにPX/MCプレミアムマットペーパー・ベルベットファインアートペーパー・フォトマット紙/顔料の順で濃度が高かかったが、それほどの差ではない。極端に低かったのはテクスチャードアートペーパーでこの用紙は選択しない方がよい。
ウルトラスムースファインアートペーパーとベルベットファインアートペーパーは共に用紙厚が0.5m/mなので、ドライバで用紙厚を調整できる場合は0.2m/mにしてピクトリコのフィルム厚(TPSは0.133m/m)に近づけるとよい。用紙厚を調節できない機種は用紙厚が0.2m/mのPX/MCプレミアムマットペーパー・フォトマット紙/顔料を選択すると良いだろう。
ドライバでインク量を調節する方法もあるが、少しづつ調整してテストするより、用紙を決めた方が楽なので、このような方法を使っている。

ピクチャ 2.png

ニュートンリングその後の対策

バキュームポンプを止めることでニュートンリングは解決したが、この方法は非常に真空度が高く、かつフレームが平行になっている物にしか使えない(ポンプの種類にもよる)。縦型だとポンプを止めるとガラスの自重で真空を保てない。ニュートンリング防止用のガラスに取り替えるのが一番良いのだろうが、小さいサイズならともかく大きいサイズになると容易ではない。また、清掃も難しい。
何か良い方法は無いだろうか?そんな時、友人が面白い物を見つけた。
両面にマット加工をしてあるフィルムだ。PPCやプロッターなど製図用に使うらしいが、このマット加工が非常に細かいのでネガとガラスの間に入れても画像に影響しないことがわかった。厳密にはテストが必要だが(露光量が変わる/マット加工が均一でない物がある/)一つの解決法になるだろう。

  松原商事
桜井株式会社

ニュートンリング

今年(2009)に入ってから急に画像に変なムラが出るようになった。
HP  001 (1).jpg

小さな島のようなムラがいくつも出る。最初に疑ったのはニュートンリングだが、通常木の年輪のような形になるので、ニュートンリングはまず除外。次に紙を変えてみた。しかし3種類でテストしたが、同じようにムラが出た。ムラは毎回出方が違うのでデジネガではないと思ったが、念のためにTPKとTPSで同じ画像のネガを造り、またアナログネガも試したが、やはりムラが出る。

現像液もクエン酸とシュウ酸の両方を、かつ温度も変えて試したが変わらず。
ここまでくると感光液しか考えられない。No.1を新しく作り直してテスト。ダメ。ちょうどPdもなくなってきたので新液を作るが変わらず。PGIで販売しているボステック&サリバンのNo.1溶液にはシュウ酸第二鉄だけという話を聞いたので(自作のNo.1は古典的な処方でシュウ酸第二鉄とシュウ酸)試してみたが、変わらず。ここでお手上げになった。

毎回出方が違うのでガラスの汚れではないと思ったが、やることも尽くしたので磨いておこうかと思い、ちまちま拭いていた時、ふと思い立って紙とネガを入れてバキュームをかけてみた。特にいつもと変わらず台のゴムが持ち上がりネガとガラス、紙が密着する。しばらくなにげに見ていたが、その時ネガの透明部分に小さなムラの出来ているのに気がついた。時間の経過とともにそれはどんどん増えて画像の上にも出始めた。

HP  001.jpg

これだー!!一番最初に原因から除外したニュートンリングだ。蛍光管による散光と徐々にムラが大きくかつ増えていくので、印画紙には輪郭がぼけて通常のニュートンリングとは違う形になったのだろう。
今年に入ってムラが出るようになったのは微妙な湿度の変化もあるだろうが、大きな原因はバキュームポンプを変えたからだった。今まで使っていたポンプはかなり使用しているので、スペアで持っていたポンプに変えたのだ。スイッチを入れてから吸着するまで約5秒という強力なもの。これが災いした。
ニュートンリングが出来始める時間を計ってみると1分あたりからで始めるので、30秒でポンプを止めてみる。約5分後調べてみると若干出来てはいるものの、ほぼ問題ないレベル。
この方法で実際にプリントしてみたが、全くムラは出ていない。
やっと解決したが、疲労感「大」

シュウ酸第二鉄

プラチナ・パラジウムプリントの第一液、シュウ酸第二鉄がまれに溶けないことがある。
過去に2回ほどあったのだが、不思議なのはすんなり溶けるときもある。


_MG_6495.jpgいくらかき回してもこの様な状態。


_MG_6494.jpg一晩おくと沈殿する。上澄み液はいつも使う溶液と同じ色。



何とも不思議なのだが、つい最近も同様に溶けないことがあった。人に聞くと、溶けないことはないので薬品が古くなっているのではないか、湿気を吸ってだめになっているのかも、とどうもはっきりした原因がわからない。安い薬品ではないので、この際溶かし方を再検討してみたところ、おそらくそれが原因と思われることに気がついた。

かつては蒸留水を室温で使っていたが、最近は手を抜かないで50℃から60℃くらいに暖めて、そこに薬品を投入していた。しかしこの方法は、暖めている間に蒸発してしまい、実際には薬品に対する蒸留水の量が少なくなる事だ。サランラップなどをかけているが、全体量は減ってしまう。夏場はおそらくさほど蒸発しないが、冬場は室温との差で蒸発が激しいのでは?同じ方法でかつて溶けていたのは夏場だったかもしれない。蒸発して蒸留水の量が減り、飽和状態となって溶けないと思われる。

そこで、計った薬品をビーカーに先に入れて、そこに湯温を入れてみた。これは正解だった。上記の溶けなかった時と同じロットの薬品だったが、きれいに溶けた。

薬品のせいではなく、やはり飽和状態だったのかもしれない。手を抜かなかったことが仇となってしまった。って蒸発する位すぐ気がつきそうなものだが。
ずいぶんと永いことP/Pをやっているが、つまらないところで躓くものだと反省!!

紫外線蛍光灯

紫外線変化量.gif

紫外線露光器の時間経緯による紫外線量の変化を測定してみた。
Aは全く冷えた状態からのスタート
BはAの測定後5分経ってからの計測
CはBの計測後さらに5分経ってからの計測
(フィルム面から20センチほど離した状態での測定なので、実際の露光量とは違います)


このグラフを見ると2分30秒辺りから紫外線量が安定するのがわかる。「昨日と同じネガなのに濃度が安定しない」と言うことを経験してきたが、このテストの結果から、最初のプリントをする前に3分ほど点灯した後に本番をプリントすると、露光時間のデータが安定するだろう。

現在使用している蛍光管はかなり古いので、新しいものではもっと速くピークに達するかも知れない。また、インバーター式かトランス式によっても違いが出る可能性がある。

オルタナティブプロセスにおける安全光

DarkRoom Tipsで紹介した紫外線測定器で室内を測った結果、よほど蛍光灯に近づけない限り紫外線の数値はほぼ0という結果となった。
オルタナティブプロセスでは、薄暗いタングステン光の下での作業というのが今まで言われてきた事だが、もし、紫外線が感じられないのなら明るい蛍光灯の下でも作業は出来る事になる。
本当だろうか?
自作測定器の精度の問題も考えられるので、実験してみた。

  • 紙にいつもの配合のパラジウムの感光液を塗り、全暗黒の暗室で乾燥させる。
  • 三分の二ほどを赤いフィルターで覆い念のためその上にも紙を置く。

_MG_2334.jpg
_MG_2337.jpg

  • 部屋の明かりを全て点灯させる。(約EV7)
  • 10分おきに紙をずらして、合計30分放置した後、通常の現像をする。

_MG_2342.jpg

結果は上の写真のように全くカブらなかった。念のため濃度計で計ってみたが、未露光部分と室内光にさらされていた部分の違いはなかった。
薄暗いタングステン光と言うのは迷信?

銀塩において、現像液に浸けた瞬間は感度が上がるという話を聞いた事があるので(調べようがないが)、それに倣って現像液周辺は暗めにしておいた方がよいかもしれない。

紙のPh

オルタナティブプロセスでは紙のPhが重要になってくるが、その実験をしてみた。テストした紙はFabriano Classico5という紙。ベースは白で、滑らかな表面を持っている。表裏ほとんど変わらず、どちらでも使えそうな紙だ。
1枚はそのままパラジウムの感光液を塗り(写真下)、もう1枚はシュウ酸2%の溶液に10分浸し一晩乾かしたものに、感光液を塗った(写真上)。露光時間、現像時間その他条件は一緒。結果は下の写真のように、明らかにシュウ酸を通した紙の方が色味、最大濃度共に使える紙になっている。

 Job -2.jpg


紙の伸縮

紙は濡れると伸縮するが、ガムプリントなどで何回も同じネガをプリントする時には、その伸縮が大きな問題となる。したがって、ガムプリントをする際は紙がどの位伸縮するかが重要だ。簡単なテストをする事で、その紙がガムプリントにむいているかどうかを確かめる事が出来る。

  1. 使用を予定している紙に鉛筆で縦横に直線を引き、5cm、あるいは10cm間隔で正確に印をつける。
  2. その紙をプロセスの間水に浸かっている時間だけ、水に浸けておく(もちろん水洗の時間も考慮する)
  3. 十分乾燥させた後に、直線を計ってみる。大抵の紙は伸縮しているだろう。その差が0.2ミリもあったら、画像は鮮明になならない。
  4. 最初の直線から1cm程離して、もう一本の直線を新たに引く。
  5. もう一度、プロセスに必要な時間だけ水に浸ける。
  6. 十分乾燥させてから2番目に引いた直線を計る。もしこれで長さに変化がなければこの紙は1回前水浴をして乾燥させれば良い事になる。
  7. もしまだ伸縮があるようなら、もう一度作業を繰り返す。

紙.jpg
Fabrano Artisticoでは2回の水浴で、ほぼ伸縮はなくなった。したがって、1回目は水で、2回目は水に浸け終わった後に、2%のシュウ酸溶液に10分ほど浸けてから乾かすことにしている。

乾燥させる時はクリップで吊るして軽く水を切った後、スクリーンに乗せて乾燥する方が、重力による紙の伸びを考慮しなくて済むのでよいと思う。もし吊るすのであれば、本番でも同じように吊るす。